鳥コンDistで優勝を狙うならどういう戦略を取るべきか?

優勝を確実に狙うなら
「90~120min、多少の外乱があろうと直進し続けられる機体・パイロット」を目指すべき
だと考えています。
 その理由は以下の通りです。
[1.飛行時間,パイロットトレーニング方針,機体性能の面から]

直進戦略をとった方が、最大飛びうる距離が縮みますがその代り確実性は増します。僕は

「多くのパイロットが40km目指して120min中出力に耐えるトレーニングをし、本番60~90min飛んだところで外乱により高出力が要求され、墜落しているのはもったいない」

と考えています。それを踏まえるとパイロットのトレーニング目標としては下の二通りが考えられます

 直進戦略をとった場合、想定飛行時間が少し短い分、高出力にしばらく耐える方向に鍛えることができます。折り返し戦略をとった場合、想定飛行時間が伸びる分外乱に耐える方向へのトレーニング量が減ります。
・直進戦略をとった場合、限界点まで飛行する確実性が上がります。
・折り返し戦略をとった場合、もし外乱が例外的に小さな年であれば他を引き離して優勝・折り返し成功する可能性があるが、通常の年であれば外乱に飛行途中で負け、優勝を逃す可能性が上がります。

[2.琵琶湖の地形、鳥コンルールの面から]
まず、折り返しルールとは何ぞや、飛距離ってどう決まるのか?という話から始めます。
[20km折り返しルール(飛距離計算ルール)]

 鳥コンでは琵琶湖の北側と南側の二か所で折り返しが可能です。「じゃあ折り返さないと優勝は難しいのでは?」と思うかもしれませんが、実はこれまでの鳥コンを見ると次のことが言えます

1. 琵琶湖北側の気象条件が良かった場合
 折り返しラインが陸地に近すぎ、折り返しが困難です。2011年の東北大学も陸地から吹く風に押し戻され、20kmの折り返し地点に到達できませんでした。
 これ以外にも優勝チームが北側の折り返し地点付近に到達した05年の実績は北側18km地点で折り返した(当時折り返しは18km)日本大学は折り返して約4km、飛行距離22kmで墜落、二位のクールスラストは折り返しの旋回中に墜落という結果で、折り返さなくても到達可能な距離です。
 なぜかというと、YAMAHAが98年大会で琵琶湖北岸に到達した際の飛距離が23kmを超えているからです。
 よって、
・北側に進路を向けねばならない場合、折り返しは優勝の必要条件ではなく、かつ折り返し40kmは非常に困難です。

2.琵琶湖南側の気象条件が良かった場合
 琵琶湖北側よりかは折り返しやすいです。実際東北大が08年に18km地点で折り返し36km飛行した際は琵琶湖南側ルートでした。
 しかし、南側ルートの場合折り返さなくても34kmまでは飛べます(03年の日大)。そのため折り返さなければ優勝できないパターンは東北か日大が34km以上飛行した場合しか考えられませんが、30km以上飛行したチームは03年~12年で04年の日大とMeisterと08年の東北のみであり、そういったパターンに陥る可能性は非常に低いと考えられます。よって
・あからさまに気象条件が良い大会だった場合や一番機が40km飛んでしまったレアケースを除けば折り返しは優勝の必要条件ではありません
・折り返し40kmは非常に例外的に良い気象条件にあたった場合は不可能ではないですが、通常の気象条件であれば大きな困難が伴います

3.琵琶湖全体の気象条件が悪かった場合
 これが一番ありそうな場合ですが、この場合明らかに外乱に耐えうるトレーニングをしたパイロット・低出力を狙った機体の方が飛びます。
・琵琶湖全体の気象条件が悪かった場合、直進性能が高いパイロットと機体が優勝の必要条件です。折り返し40kmは不可能です。

[以上をまとめると]
鳥コンの戦略を考える場合、
1.確実な優勝を狙い、直進性能を上げていく
2.折り返し40kmを狙い、非常に小さいワンチャンにかける(ギャンブルに出る)
の二択に絞られます。僕は僕は1.を押しますが、皆さんはいかがお考えでしょうか?

※ytvさんの精神衛生には良くない記事なのであんまり広めないでください
※これは一個人としての考えです

翼厚が欲しくて欲しくてたまらない方へ

前の記事のグラフに表れた"216016"略さずに書くと「FX76MP160mod-DAE21mod_50-50_16%」の座標を公開してよいとのお許しが著作者から出たので載せます。ホント太い(笑いが出てくるくらい)
使用改変はもちろん自己責任で

fx-21 160_16%
1.00000 0.00000
0.99865 0.00080
0.99528 0.00194
0.98979 0.00356
0.98218 0.00570
0.97249 0.00838
0.96077 0.01155
0.94706 0.01538
0.93143 0.01978
0.91394 0.02492
0.89471 0.03066
0.87376 0.03720
0.85126 0.04432
0.82723 0.05223
0.80186 0.06062
0.77516 0.06968
0.74733 0.07897
0.71845 0.08845
0.68871 0.09757
0.65820 0.10619
0.62704 0.11396
0.59529 0.12091
0.56311 0.12681
0.53060 0.13177
0.49792 0.13559
0.46519 0.13854
0.43257 0.14037
0.40020 0.14129
0.36824 0.14108
0.33683 0.13999
0.30611 0.13778
0.27622 0.13472
0.24727 0.13057
0.21942 0.12564
0.19276 0.11969
0.16745 0.11304
0.14353 0.10544
0.12118 0.09727
0.10041 0.08835
0.08143 0.07911
0.06422 0.06940
0.04894 0.05965
0.03559 0.04965
0.02434 0.03996
0.01515 0.03037
0.00820 0.02148
0.00342 0.01325
0.00081 0.00628
0.00000 -0.00029
0.00079 -0.00486
0.00334 -0.00961
0.00841 -0.01431
0.01584 -0.01761
0.02548 -0.02053
0.03704 -0.02263
0.05062 -0.02464
0.06608 -0.02595
0.08340 -0.02724
0.10246 -0.02783
0.12323 -0.02830
0.14561 -0.02808
0.16949 -0.02784
0.19479 -0.02695
0.22138 -0.02612
0.24918 -0.02470
0.27803 -0.02339
0.30784 -0.02155
0.33845 -0.01990
0.36976 -0.01781
0.40161 -0.01597
0.43391 -0.01376
0.46646 -0.01185
0.49917 -0.00961
0.53187 -0.00772
0.56445 -0.00555
0.59675 -0.00370
0.62865 -0.00157
0.65999 0.00028
0.69067 0.00238
0.72052 0.00415
0.74946 0.00606
0.77730 0.00740
0.80394 0.00865
0.82925 0.00917
0.85315 0.00959
0.87553 0.00929
0.89629 0.00894
0.91536 0.00799
0.93265 0.00713
0.94812 0.00580
0.96166 0.00467
0.97327 0.00326
0.98281 0.00219
0.99032 0.00107
0.99568 0.00049
0.99889 0.00027
1.00000 0.00000

翼型作ってみました(3月くらいの話)

 ここ1,2年、人力飛行機業界ではこれまでのDAE21,31やFX76MP120などから脱却して新たな翼型を使おう/作ろうという流れがTT機を中心に出てきました。
 その要因はTT機の片持ち化が進んでいることでしょう。片持ち機はワイヤー機と違って桁のみで翼を支えるため桁が重くなりがちであり、桁を太くすることが軽量化につながります。しかしTT機の場合Dist機に比べて翼面積が相当小さいのでコード長が稼げず桁は細くなりがちです。
 そのため細い桁を使って重量増に泣き叫ぶか、スパンを短くして誘導抗力増で枕を涙に濡らすかの二択でした。
 そこで「桁の厚みを出来るだけ大きくしつつ、揚抗比ができるだけ小さい翼型をないんだったら作ろう」ということになって現状いろんな大学が取り組んでいるんだと思います。

 ちなみに僕が参加している某人力飛行機サークルは片持ちのDist機です(サークル名言ってるようなもんだ!!)。翼型はDAE31を使ってきました。そうするとTT機ほどではないですが
「翼を伸ばすとコード長が縮み桁が入らなくなるから伸ばせない→誘導抗力増→抵抗増」
という状態になっていました。(他の強豪校が翼幅32~3mに対してうちは30m強)
そこで「とにかく翼を伸ばして誘導抗力をへらし、桁が通るように翼厚が大きい翼型を使おう」ってなったわけです(今年の2月)

というわけで作ってみました。
DaE97.01

上面はこれまで使ってきたDAE31、下面は後縁側半分はEppler66、下面はDAE31を後縁につながるようにキャンバーと翼厚をいい感じにいじって前縁側の曲率半径を小さくしたものです。
一番下に翼型の座標を載せました。使用、改変は自己責任でご自由にどうぞ。

で、気になることは1.翼の厚さ、2.揚抗比が他の翼型と比べるとどういう特徴を持ってるか考えてみます。
 まず比べ方を考えてみます
・翼の厚さ
 たとえば太い翼型を見て「やった〜、使おう」と思って使おうとします。そうすると実はその翼型のClが大きいとします。そうすると翼上のそれぞれでの揚力の大きさl(N/m)は
 l = 1/2×ρ×c×Cl×V^2
となり、Clが大きい分cが小さくなり、翼の厚さは
 (翼厚)=(翼型の厚み)×c
であるためかえって翼厚が小さくなってしまいます。
 それを避けようとするとこれまでのように同一Reで翼型の厚さを比べるのではなく、例えば同一lで
 (翼型の厚み)/Cl
を比べるべきだと考えています
・翼の揚抗比
 これも翼の厚さと同様に同一Reではなく、同一lでの揚抗比を比べるべきだと考えています。

で、やってみました。
揚抗比の比較(V=7.2m/s 迎角=4.0degree)

桁穴径の比較(桁穴位置38% オフセットなし)

各翼型の簡単な紹介
・DaE97.01 今回の翼型
・DAE31   人力業界でよくつかわれている翼型。ダイダロス開発時に「揚抗比最大」を目指した・
・FX76MP120 Distで使おうとしている団体もある。マスキュレアーに使われた
・FX76MP149 WASAのmorita.nさんが去年FX76MP120と140を使って作った翼型
・FX76MP140 分厚〜い翼型
・216016 某大学人力飛行機サークルが今年作った分厚い翼型。
・NaGAf54_512 WASAのmorita.nさんが遺伝的アルゴリズムを用いた翼型混合最適化で作った翼型
・E66    Eppler教授がグライダー/模型飛行機用に作った翼型。WASAが翼端側に今年使用
・E6612.3 E66の翼厚を12.3%にした翼型

で分かりにくいので
DaE97.01
DAE31
FX76MP120
FX76MP140
FX76MP149
だけの比較もやりました

DaE97.01
1.00000 0.00000
0.98702 0.00290
0.96694 0.00768
0.94620 0.01290
0.92495 0.01849
0.90332 0.02443
0.88137 0.03068
0.85917 0.03719
0.83679 0.04389
0.81431 0.05072
0.79190 0.05752
0.76970 0.06415
0.74777 0.07049
0.72607 0.07645
0.70453 0.08200
0.68305 0.08716
0.66162 0.09192
0.64020 0.09629
0.61875 0.10026
0.59725 0.10384
0.57569 0.10705
0.55405 0.10989
0.53234 0.11236
0.51057 0.11449
0.48876 0.11627
0.46693 0.11770
0.44512 0.11879
0.42335 0.11953
0.40165 0.11990
0.38005 0.11990
0.35856 0.11954
0.33723 0.11880
0.31611 0.11768
0.29524 0.11618
0.27467 0.11429
0.25450 0.11203
0.23480 0.10941
0.21569 0.10646
0.19729 0.10318
0.17971 0.09963
0.16308 0.09585
0.14748 0.09192
0.13300 0.08787
0.11967 0.08377
0.10747 0.07966
0.09636 0.07558
0.08628 0.07157
0.07715 0.06764
0.06888 0.06381
0.06139 0.06008
0.05461 0.05645
0.04845 0.05292
0.04285 0.04947
0.03775 0.04612
0.03310 0.04285
0.02886 0.03967
0.02499 0.03655
0.02144 0.03351
0.01821 0.03052
0.01525 0.02759
0.01256 0.02471
0.01013 0.02188
0.00795 0.01907
0.00601 0.01630
0.00431 0.01354
0.00284 0.01080
0.00160 0.00807
0.00066 0.00537
0.00013 0.00268
0.00001 0.00135
0.00000 -0.00012
0.00009 -0.00252
0.00045 -0.00500
0.00120 -0.00755
0.00246 -0.01008
0.00426 -0.01243
0.00654 -0.01450
0.00916 -0.01619
0.01201 -0.01762
0.01504 -0.01884
0.01825 -0.01992
0.02163 -0.02092
0.02520 -0.02184
0.02899 -0.02265
0.03302 -0.02342
0.03730 -0.02409
0.04188 -0.02471
0.04680 -0.02525
0.05209 -0.02572
0.05782 -0.02614
0.06403 -0.02651
0.07080 -0.02681
0.07822 -0.02702
0.08637 -0.02717
0.09537 -0.02722
0.10534 -0.02717
0.11641 -0.02702
0.12872 -0.02675
0.14235 -0.02633
0.15736 -0.02578
0.17375 -0.02508
0.19139 -0.02423
0.21013 -0.02325
0.22974 -0.02216
0.25003 -0.02097
0.27079 -0.01971
0.29189 -0.01839
0.31319 -0.01702
0.33462 -0.01564
0.35612 -0.01424
0.37765 -0.01284
0.39917 -0.01145
0.42067 -0.01009
0.46476 -0.00738
0.48788 -0.00596
0.51098 -0.00457
0.53405 -0.00319
0.55707 -0.00185
0.58006 -0.00055
0.60300 0.00070
0.62587 0.00190
0.64868 0.00304
0.67141 0.00410
0.69407 0.00509
0.71664 0.00599
0.73911 0.00679
0.76145 0.00748
0.78365 0.00806
0.80565 0.00850
0.82745 0.00878
0.84899 0.00890
0.87021 0.00883
0.89105 0.00855
0.91143 0.00803
0.93128 0.00721
0.95059 0.00601
0.96940 0.00431
0.98783 0.00200
1.00000 0.00000